スズキ アルトターボRS

スズキ アルトターボRS

スズキ アルトターボRS

 なぜ、今、このデザイン?
 この車を初めて見たときの感想である。
 かつて、アルトはスズキの軽自動車の中で一翼を担う有力車種であった。はずである。
しかし、ワゴンR発表以降その存在は薄れてゆく一方であった。故徳大寺有恒氏も妻のためにワゴンRを購入し、また氏自身も運転し
その出来栄えは各種誌上でほぼ絶賛に近い形で発表されていた。
特に氏がその出来を評価していたのがそれまでにない、現在ではカテゴリとして確立しているハイトワゴンの嚆矢となったからである。
そのワゴンRの台頭が、皮肉にも自社製品であるそれまで販売していた軽自動車を席巻してしまったのである。
 これは、スズキに限らず他のメーカーにおいても既存のデザインを一部では残しながら売れるという理由で少なからずハイト系にせ
ざるを得なかったことになった。

 その後、スバルがフルタイム4WDターボで成功すると、普通車のみならず軽自動車にもそのシステムは搭載されてゆく。自社規制枠
とゆうよく解らない理由で64PSという出力規制こそあったものの、一時期はフルタイム4WDターボ以外は車にあらずという状況に
なってしまった。アルトはこの波にも乗りきれなかった。

 それから、景気の後退とともに重量が嵩み燃費が悪いだけのシステムは見直され、特に軽自動車においては軽く・低燃費である車種が
再び脚光を浴びることになる。フルタイム4WDのシステムは残ったが、燃費悪化の象徴ともいえるターボに関しては搭載している車種
がごく一部に限られるようになった。そして、このような時期においてもアルトはその姿を埋没させたままであった。

 そして、2014年12月新型が発表される。はっきり言って腰が抜けた。良い意味で驚いた訳ではない。ここまで原点回帰を求める
必要があったのかと思わせるほどに、よく言えばレトロチックにしたものだとあきれたのである。
 初代発表は1979年、昭和でいえば54年である。当時はフロンテの商用版として発表され、実質前席2人乗りであった。排気量も
550ccに規格移行され、軽自動車を販売していたメーカーは混乱を極めていたはずである。
 5年後の1984年、規格移行に各メーカーも落ち着きを見せ、アルトも次の世代に移行する。この初代と2代目のデザインが現在の
デザインにかぶって見えるのである。当時は比較的新しくまた、主流になりつつあった直線的なイメージがここで一応の完成を見せた。
と思いたい。ちなみに前述した64PS規制の発端となったターボモデル(アルトワークス、単にワークスとも呼ばれる)もこの2代目
に含まれ、1987年に発表されている。

 アルトターボRSとアルトでは外観に大きなデザイン変更はない。ターボRSがフォグランプを標準で装備している程度である。そし
て、アクセサリーカタログを見てみると、ここでも大きな差別化は図られていない。極端なことを言えば、アクセサリーの選択で外観は
ターボRS以上にドレスアップが可能なのである。これは別にアルトに限らず、同社他車種また他社車両においても外観での判別をつき
づらくする程度にはカスタマイズが可能である。しかしながら、アルトには他車にないカスタマイズが存在する。それが「めがねガーニ
ッシュ」と呼ばれるライト周りのグリルである。まるで眼鏡を変えるように実に8種類ものアイテムを用意している。その他にエクステ
リアを自分の好みに変更できるよう、各種デカール・ガーニッシュが用意されているが、これがまたどうにも中途半端なカフェレーサー
風のデザインに終始しているのである。インテリアに関しては一応エクステリアとの整合を図っているように思われるが、エクステリア
をレトロに寄せるほどに、ちぐはぐ感は極だってしまう。

 温故知新、古きを訪ね新しきを知ることは決して悪いことではないはずであるが、このアルトに関しては成功しているとは思えない。
ポルシェ911あるいはフォルクスワーゲンビートルのように、世代を経てもその外観からそれでしかあり得ないというコンセプトが
確立しているならば、多少の事には目をつぶれよう。しかしながら、アルトにはそのようなものは一切感じられない。すくなくとも現
在40代の筆者にはそうとしか捉えられない。これは自分の感性が古びてきたのだろうか?現在の20代にはこういったデザインが受
け入れられるのだろうか?それは今後のこの車の売れ行きで判断するとしても、まず間違いなく自分では購入しない。これは断言でき
る。
 なぜならば、これほどに投げやりなあるいは、当時のデザイナーに敬意を表したという表面上のコメントを鵜呑みにはできないから
である。
 

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2015年5月21日|コメント (0)トラックバック (0)

カテゴリー:スズキ

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